NAVYAな人々 of 鍼灸院ナヴィア928


TEL 052-776-0928(予約制)

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since 2006
名古屋市守山区にある「はり」「きゅう」「小児はり」鍼灸専科の治療院
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bind_11.jpgNAVYAな人々

カルテ1

One Life

彼の鍼灸師としてのスタートは杜撰なものであった。
初めて診た患者さんは、手の腱鞘炎の方で、教科書通りに所見をとり十分な病態把握もしないまま、圧痛点と一致する『陽谿』(手首のにあるツボ)のみに鍼を置鍼すること20分、治療を終えた。
今でも忘れないと彼は言う。
その患者さんの「おおきに、楽になりましたわ」と深々と頭を下げて病室を出る姿を。
彼の心の中には、正直どうしていいのか分からないまま施したにも関わらず、丁寧なお礼を残し帰っていかれた患者さんに、どうしようもないほど申し訳ない気持ちで一杯な自分が居たと言う。
この時初めて彼は『お金を頂いてお礼を言われる』仕事に就くのだと理解した。
以来、本当の意味で自分の仕事に対し『ありがとう』と言ってもらえるようになりたいと本物の鍼灸治療を追い求めている。
あれから16年どれだけ本物の『ありがとう』を聞けたのだろうか?追い続ける日々は今日も続く。

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カルテ2

風に吹かれて

4月のある日、麦わら帽子をかぶった一人のアメリカ人が治療院にやってきた。
彫りが深く大きな目でニコッと笑い陽気なその性格は私のアメリカ人のイメージにぴったりの人だった。片言の日本語で一生懸命自分の症状を説明してくれた。
話によると彼はストリートミュージシャンをしていて、背中にドラムとシンバルを背負い、肩からギターをぶら下げ、首にハーモニカを固定して演奏していると言う。
そんな彼の姿は容易に想像できる。
もちろんトレードマークの麦わら帽子は欠かせない。
そのスタイルから首肩に負担がかかるのだろう、肩から腕にかけて痛みと痺れがあると言う。
彼は、南から桜前線にあわせて日本を移動し、花見で賑わう場所で演奏を披露している。
ほろ酔いのサラリーマンがチップをはずんでくれるそうだ。
彼に招待され花見で賑わう公園に行ってみると、大きな人だかりがあるのにすぐ気がついた。
その輪の中心にイメージ通りの彼が艶やかな服装で身をまとい陽気に歌う姿があった。
ギターを弾き、時にハーモニカを吹き、器用に足を使って背中のドラムとシンバルを操っている。
桜が舞う公園で楽しいひとときをみんなで過ごした。
最後にボブ・ディランの「風に吹かれて」を私のリクエストに応えて演奏してくれた。
毎年桜の咲く頃になると、「風に吹かれて」を聞きたくなる。
その後彼を見る事もなく治療院に訪れる事も今はない。


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カルテ3

言葉にできない

ダウン症の患者さんがいる。
もう10年以上の付き合いだ。
彼は成長したが、心は初めて会った頃のまま天使のような純粋な心の持ち主だ。
弱き者の力とでも言うのか、不思議と私の心も洗われる。
安い時給で作業所の仕事をし、その給料で靴下やTシャツを買っては自慢げに話してくれる。
120円の缶ジュースを買うのに小銭入れを覗き込んで、どうしようか?と迷っている。
そんな彼が大好きだ。

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カルテ4

アトムの子

彼は小学5年生、治療院に10年通っている。
初診時の状態は目を開ける事もなく、グッタリと横たわり、時折四肢をピクピクと痙攣させる。
それを繰り返すだけだった。
彼の診断名は「てんかん」で1日に60回以上の発作を起こしていた。
我々スタッフも手探りの状態での鍼灸治療となった。
彼の母親は365日のうち300日は治療院に通っただろうか?それにしても母親の愛情と必死さを感じる日々だった。
時は流れ現在、小学生になる彼は奇跡的に症状が完治している。
しかし当時の投薬により脳の発達遅延があり、脳と体のバランスが悪く周囲の人々の誤解を招いている。学校においてそれははっきりと現れている。
『いじめ』だ。
彼とはメールにて治療所で話せないことをやり取りしていて、その中で初めて彼自身から知らされた。ショックだった。
周囲の子供達は、大人達の彼に対する対応の仕方を見てその関わり方を学ぶものだと言われている。
だとすれば、『いじめ』の原因の大部分は大人達にもあるということだ。
彼の存在を認め、現時点での障害を認め、個人としての価値を持たせ、長所を褒めてそれを伸ばすよう彼自身に自信を持たせなければ解決の糸口は見つからないのではと感じている。
子供には無限の可能性が秘められていることを大人は忘れてはいけない。
胸を張って歩ける日がきっと来る!!

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カルテ5

Remember My Name

彼は19歳。
高校を卒業し、とある作業所にてリハビリを兼ねた社会復帰訓練を行っている愛くるしい笑顔で周囲を和ます好青年だ。
待合室で他の患者さんが脱いだ靴を自然に揃えることのできる青年なのだ。
一見誰が見てもその障害には気づかないほど外見は健康そのものだ。
彼が抱えるその障害は『長期記憶障害』新しい記憶が脳に入力されても10分後ぐらいには全て削除されてしまうのだ。(高次脳機能障害)
原因はアメリカンフットボールの夏合宿の場で、脳挫傷と熱中症による後遺症であった。
病院での機能MRIにて脳内の糖代謝が悪く、また海馬の血流も悪いと判明。
現在も鍼灸治療を併用するも残念ながら著効は認められない。
おもしろいことに、CMや音楽や人の名前などは興味があり、印象に残るとしっかり覚えていることもある。
完全に記憶の回路が破壊されている訳ではないようだ。
現在、手帳に記憶中枢の代行をさせ、上手に周囲の人たちと関わって行けるようになってきた。
しかしその代償として自分の記憶能力を向上させる試みは忘れられているようだ。
19歳の彼にとって、この現実を背負って生きて行くのは大変な事だろう。

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カルテ6

キズナ

彼は、男3人兄弟の末っ子。
兄弟喧嘩が耐えない日々。
男兄弟にはよくあることだ。
しかしそのいつもの光景に悲劇がおこる。
その時もいつもの喧嘩のように思われたが、兄が彼を突き飛ばした時に状況は変わった。
彼は頭を床にぶつけてしまい運悪く脳内出血を起こしてしまう。
以後、彼には左側に麻痺が残ってしまった。
何より家族が背負う彼に対する思いは私には想像もつかない。
現在、当院には毎週その兄たちがつれてきてくれる。
彼とは長い付き合いになったが不自由な体を精一杯使って仕事をし、自分の家を建てた。
それでも、今も事故を起こした頃の話しをすると目に涙を浮かべて私の顔を見つめる。
その姿は忘れる事ができないだろう。

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カルテ7

Mother

1歳になる彼女は吊り上がった目で不安そうに私のことをジーっと見つめていた。
夜泣きが酷くて家族の者がホトホト困っていると相談を受けた。(お婆ちゃんの電話)
彼女はそのお婆ちゃんに抱かれ、その後にお母さんが付いてこられるという感じに違和感を覚えた。
夜泣きの様子を事細やかに説明するお婆ちゃんを制止してお母さんに彼女を抱かせて説明を求めると、
突然大粒の涙を流した。
(どうしちゃったのかな?)しばらくしてお母さんが重い口を開けた。

「この子を身籠った後、夫と別れました。悲惨な離婚だった。彼の事がただ憎くて、生まれたこの子を見ると彼の事を思い出しとても好きにはなれませんでした。・・・」と。

彼女の育児は以来お婆ちゃんが全てやってきたと言う。
遊ぶのも、ミルクを与えるのも、お風呂に入れるのも、抱っこするのも全て。
夜泣きで泣いていてもお婆ちゃんが必死にあやしていたそうです。

お母さんを見上げる娘を抱きながら「本当にごめんね〜」と泣き崩れた。
その時でした不思議な事が起った。
彼女は笑いながら泣き崩れるお母さんを見上げ、ギューッと抱きついたのです。

お母さんにも彼女の想いが通じたのか反射的に彼女を強く抱きしめる本来の母親の姿を取り戻したのです。

お母さんの気持ちは彼女が一番分かっていたのかもしれません。
子供と言うのはいつでも不安で不安定な心の持ち主です。
夜泣きをするのはある意味当たり前の事で、そんな時はギューっと抱きしめてあげて下さい。
安心するまで。お母さんの肌の軟らかさや温もりが彼女を安心にさせると私は信じています。

これからです。

『絆』を築くのは。

決して遅くはありませんよ。
あなたは立派なお母さんです。

帰る時には彼女の吊り上がった目つきは消えていました。

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カルテ8

How do you sleep ?

平均して心拍数が100を超える患者さんがいる。
脉診(東洋医学的所見)をすると細い筒の中をコロコロした物が数珠つなぎに押寄せてくるかのように感じ取れる脉をしている。
彼女は毎日を「このテンポ」で生きているのである。
「このテンポ」と言うのは目の動きや、呼吸、喋るスピード、動作などに反映され、他人から見ると気忙しく落ち着きの無い人として写ってしまう。
過度の緊張状態がそうさせるのです。
自分のこと、家族のこと、他人のこと、生活環境、社会に対し異常なほど気を遣う方なのです。
そして、次から次へと頭の中を駆け巡る事柄について心が反応して「このテンポ」が作り出されているのでしょう。
彼女の自覚症状は「交感神経優位な自律神経症状」が全てで、焦る気持ちを私に訴えてきます。
鍼灸治療は主に伝統的鍼灸医術を用いて優しくアプローチしながら徐々に副交感神経を刺激して行くよう心がけて施術します。
肩の力が抜けて、何かを噛み締めた様な表情も緩み、胸郭も広がった感じを受けるようです。
この時の心拍数は70〜80に減少しており「このテンポ」の彼女に変身してしまうのです。
落ち着いた穏やかな女性になってしまうのです。
キョロキョロした目の動きも無く、呼吸も落ち着き、喋るスピードすらも落ち着いてしまうのです。
人間の神経作用とは驚くべき力を持っているものだとつくづく思い知らされる瞬間であります。
彼女の心休まる時がくるよう今も向き合っています。